初めに
ICU(インテンシブケアユニット)は、「生命の危機に瀕した重症患者を、24 時間を通じた濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療する診療空間 」とされています。そのためICUでは、生命の危機に瀕した患者に濃厚な治療・ケアを提供することにより、生命の危機を回避し、できる限り元の生活に戻すことが目標となります。
しかしICUでは多くの医療機器や観察項目があり、新人看護師は「何を目標にして受け持ちをしたらいいのか分からない」と悩むことがあると思います。
私もICUで働き始めたときには日々の目標をどのように立てたらよいか分かっていませんでしたが、ICU看護師の役割を理解することで、患者を受け持つ際の目標や観察の方向性が見えやすくなりました。
ICU看護では特に、
・重症化回避
・合併症予防
・早期リハビリテーション
の3つが重要な役割となります。
この記事では、新人看護師が受け持ちで意識したいポイントも含めて解説します。
ICU看護師の役割とは?
ICU看護師は、重症患者の呼吸・循環・代謝管理を中心とした全身管理を多種の先端医療機器の活用のもと行っている場で、集中的かつ高密度な看護ケアを提供していきます。
一般病棟と違い、複数のカテーテルやチューブ、ドレーンが体内へ挿入・留置されている場合も多く、患者にとっては侵襲となっています。また様々な侵襲的治療も行われるため、看護師は治療方法の内容を理解するとともに、可能な限り安全に配慮しながら患者に不利益をもたらさないための看護を実践することが重要になってきます。
そのためICUでは、
・状態悪化を防ぐ
・疾患や治療に伴う合併症を予防する
・回復後の生活を見据えて早期からリハビリを行う
といった視点が重要になります。

① 重症化回避
重症化回避とは?
重症患者は、生体の予備機能が低下しているために狭い範囲のなかで呼吸・循環が維持されていることがあります。そのため治療や検査、リハビリテーションなど些細な侵襲でも全身状態を悪化させる可能性があります。これを回避するためには、常に全身の酸素化と循環の維持が適切に行われているかを判断することが必要になります。
また重症患者は身体機能が不安定かつ病態変化が早いという特徴があります。私も入院患者の呼吸状態が安定していると判断し体位交換をした際に急にSpO₂が下がったことがありました。そのため、患者のわずかな変化に気づく観察力や病態、経過などから今後の変化を予測するスキルが必要となってきます。
ICUで実際に行われる看護
- バイタルサインの継続的モニタリング(体位交換やリハビリテーションなどケア中にも変化がないか確認する。)
- 呼吸状態の観察
- 尿量や循環動態の評価
- 血液ガスの評価
- 意識レベルの確認
- 急変兆候の早期報告
- 人工呼吸器やIABP、ECMOなど使用している医療機器の動作確認
- ベッドサイドモニターのアラーム設定(早い段階で患者の変化に気づけるような設定をする。アラームがなったらその原因をアセスメントし対応する。アラームは鳴らしっぱなしにしない)
呼吸数増加は急変の前兆でもあります。詳しくはこちらの記事で解説しています。

血液ガスの読み方についてはこちらの記事で解説しています。

新人看護師が意識したいポイント
新人看護師は、まず「いつもと違う」を見つける意識が重要です。
たとえばSpO₂が保たれていても、呼吸数増加や努力呼吸がみられる場合は呼吸状態悪化の前兆かもしれません。またそのほかのバイタルサインに変化がみられなくても直観的に「いつもと違う」と感じる場面に出会うことがあると思います。
そのような「いつもと違う」を見つけたときには自信がなくても先輩やリーダー看護師に相談することが重症化を回避することにつながることもあります。私もICUで勤務していて受け持ち患者のささいな意識レベルの低下やMMTの低下をほんとに違うのかと思いながらもリーダー看護師に伝えたところCT検査をすることになり、結果として脳梗塞が見つかったことがあります。
同じくらい重要なのは患者の疾患を理解することです。
疾患を理解していれば、その疾患が悪化すればどのような症状が出るのかなども理解でき、患者と関わる中でその症状がでていないか意識してみることができます。新人看護師のうちは疾患の理解がしきれないところがあると思うので先輩やリーダー看護師と患者の情報共有をしておくと先輩やリーダーが気にしてほしい症状やバイタルサインの変化を確認することができるのでオススメです。
受け持ちで立てやすい目標例
- 呼吸状態の変化を観察し報告できる
- バイタルサインの変化をアセスメントにつなげる
- 急変兆候を早期に発見する
② 合併症予防
合併症予防とは?
ICU患者は、免疫の低下や膀胱留置カテーテルや挿管チューブなどの各種デバイス類が留置されていること、高度侵襲下にあることなどから感染リスクはとても高いです。また栄養障害や血管透過性の亢進などによって皮膚は脆弱で、褥瘡や医療機器関連圧迫損傷(MDRPU)などの皮膚トラブルも生じやすくなっています。さらに身体機能の低下や治療に伴う安静の保持など、長期臥床による廃用性症候群のリスクも高くなるなどのさまざまな合併症発症リスクがあります。
ICU看護では、治療だけでなく「治療によって起こる問題」を予防する視点も重要です。
ICUで実際に行われる看護
- 口腔ケア
- 体位変換
- 体位調整
- 環境調整
- スキンケア
- ライン管理
- 鎮静評価
- せん妄予防
- DVT予防
代表的な合併症
- 人工呼吸器関連肺炎(VAP)
- ICU-AW
- 廃用症候群
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 褥瘡
- せん妄
- 尿路感染
- 敗血症
- 医療機器関連圧迫損傷(MDRPU)
新人看護師が意識したいポイント
日常的に行っているケアにも、合併症予防という重要な意味があります。
例えば口腔ケアは人工呼吸器関連肺炎の予防につながり、体位変換は褥瘡や無気肺予防につながります。病室に日が入るようにカーテンを開けたり、時計やカレンダーを患者が見れるところに配置するのもせん妄予防につながります。
「なぜそのケアを行うのか」を考えることが大切です。
受け持ちで立てやすい目標例
- 口腔ケアを適切に実施できる(いつ行うのか、何時間おきに行うのが効果的かなど、また口腔ケアに使う物品の選択など)
- 呼吸状態を観察し適宜排痰ケアを行うことができる
- 体位変換の目的を理解する(何時間おきに行うのがその患者に適しているのか、体位交換による循環動態の変動リスクが高いのかどうかなど)
- せん妄予防を意識した関わりができる(CAM-ICUやICDSCなどのせん妄スクリーニングツールを使用してせん妄を評価しながら疼痛コントロールや早期離床を計画するなど)
排痰ケアにつていはこちらの記事で解説しています。

③ 早期リハビリテーション
早期リハビリテーションとは?
ICUでは、安静による筋力低下やADL低下を防ぐため、早期からリハビリテーションを行います。
人工呼吸器装着中でも、状態に応じて座位や立位練習を行う場合があります。
ICUで実際に行われる看護
- 早期離床
- ROM訓練
- 座位練習
- リハビリ時の全身管理
- PT・OTとの連携
- リハビリ前後の観察
新人看護師が意識したいポイント
ICUでは「安静=回復」ではありません。
早期から身体を動かすことで、筋力低下やICU-AW、ADL低下を予防できます。
リハビリ中は循環動態や呼吸状態の変化を観察することが重要です。
受け持ちで立てやすい目標例
- 離床時の観察項目を理解する(勤務している病院の離床基準やガイドラインなどの早期リハビリテーション開始基準や中止基準をもとに観察するなど)
- リハビリ前後の変化を観察できる
- 多職種と情報共有できる
ICU看護では多職種連携も重要
ICUでは、医師・看護師だけでなく、理学療法士(PT)、臨床工学技士、薬剤師、栄養士など多職種が連携して患者を支えています。
リーダー看護師が主に多職種連携を行っていきますが、受け持ちをする看護師として早期リハビリテーションのために安静度があげられないか医師に相談する、疼痛コントロールが上手くいかず、リハビリテーションが進まない場合に薬剤師に使用できる鎮痛薬を相談する、理学療法士がいないときでも病棟でできるリハビリテーションを理学療法士に確認するなどの連携ができると患者にとって良い看護介入につながると思います。
まとめ
ICUでは覚えることが多く、最初は何を優先して見ればよいか分からないこともあります。
しかし「重症化回避」「合併症予防」「早期リハビリテーション」という3つの視点を持つことで、日々の観察やケアの意味が理解しやすくなります。ICU看護師は、重症患者さんの命を守るだけでなく、回復後の生活も見据えた看護を行っています。
日々の看護を通して、小さな変化に気づける視点を身につけていくことが大切です。
最初からすべてを理解する必要はありません。まずは「なぜこの観察をしているのか」「なぜこのケアを行うのか」を考えながら受け持つことで、少しずつICU看護師としての視点が身についていきます。
参考文献
1)これなら分かるICU看護
2)ICUケアメソッド クリティカルケア領域の治療と看護
3)日本集中治療学会 ICU入退室指針 https://www.jsicm.org/publication/pdf/JSICM_ICU_EnterExit_20231124.pdf
4)日本集中医療学会 早期リハビリテーション
https://www.jsicm.org/pdf/soki_riha_1805.pdf

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