はじめに
呼吸数はバイタルサインの中でも、最も早く変化しやすい重要な指標です。
しかし臨床では、血圧や心拍数に比べて呼吸数が軽視されることも少なくないです。
実際には、呼吸数の増加は急変の前兆として現れることがあり、早期に気づくことが重要です。
本記事では、呼吸数が増加する理由と看護アセスメントのポイントについて整理します。
呼吸数の正常値
成人の正常な呼吸数は12〜20回/分(文献によって差があります)。
これを超える場合は頻呼吸といい、何らかの異常がある可能性があります。

1回の呼吸にかかる時間から、おおよその呼吸数を把握することができます。
呼吸はどこで調整しているか
呼吸中枢は延髄にあり、大脳や橋、各種受容体からの情報を統合して呼吸を調節しています。
呼吸には以下の 2種類の調整があります。
【随意的な調節】
大脳皮質が関与し、発声、嚥下、深呼吸など意識的に行う呼吸です。
【不随意な調節】
化学受容体が血液ガス(pH、PaO₂、PaCO₂)の変化を感知し、呼吸を調整します。
・中枢化学受容野:CO₂の上昇・pH低下で刺激
・末梢化学受容野:低酸素時で刺激
呼吸数が増える主な理由(頻呼吸の原因)
様々な原因で呼吸数は増えますが、主に“酸素・二酸化炭素・代謝“の異常が原因となることがあります。
①低酸素
低酸素血症になると末梢化学受容野が刺激され、呼吸が促進されます。
原因例
・肺炎
・無気肺
・肺水腫
・気道閉塞
②循環不全
循環が低下すると組織への酸素供給が不足し、代謝性アシドーシスとなります。
それを代償するためにCO₂を排出しようとして呼吸数が増加します。
随伴所見
・頻脈
・血圧低下
・尿量低下
原因例
・ショック
・敗血症
・乳酸アシドーシス
・糖尿病性ケトアシドーシス
③発熱
体温の上昇により代謝が亢進するため呼吸数が増加します。また、熱を呼吸により放散させる目的で呼吸数が増加することもあります。
④疼痛や不安
強い痛みは、交感神経を刺激し代謝を亢進させるために呼吸数が増加します。
不安などのストレスは精神的興奮であり、呼吸中枢を刺激するため呼吸数が増加します。
呼吸数増加は急変の前兆になる
呼吸数は、急変の早期サインとして非常に重要です。
急変の前には以下の変化がみられることがあります。
・呼吸数の変化
・心拍数の変化
・血圧の変化
・意識レベルの変化
そのため、呼吸数の変化に早期に気づくことが重要です。
新人が見逃しやすい呼吸数の異常
呼吸数は測定していても、異常に気づきにくいことがあります。
特に以下のような場合は注意が必要です。
「少しだけ多い」状態
呼吸数が30回/分以上のような明らかな異常であれば気づきやすいですが、18回→24回/分のような軽度の増加は見逃されやすいです。
しかし、このような軽度の増加が急変の前兆であったりします。経時的な変化も確認することが重要です。
SpO₂が正常で安心してしまう
SpO₂が正常範囲であっても、呼吸数が増加している場合は注意が必要です。
例えば代謝性アシドーシスでは、SpO₂が保たれていても呼吸数が増加することがあります。
そのためSpO₂だけでなく呼吸数も必ずセットで評価することが重要です。
看護アセスメントのポイント
呼吸数が増加している場合は、以下の点を確認します。
【全身状態】
・SpO₂
・心拍数
・血圧
・意識レベル
・体温
・尿量
・冷汗
・末梢冷感
・湿潤
・チアノーゼ
・疼痛
・不安
【呼吸の観察】
・呼吸回数
・呼吸音
・呼吸パターン(クスマウル呼吸、チェーンストー
クス呼吸など)
・呼吸補助筋の使用
これらを総合的に評価し、アセスメントします。
呼吸数をすばやく把握するためのコツ
呼吸数は1分間しっかり測定することが基本ですが、臨床では巡視中などに「呼吸が早そうだな」と感じる場面があります。
そのような場合、私はまず2〜5秒程度呼吸を観察し、呼吸の速さを感覚的に把握するようにしています。
例えば
・3秒に1回の呼吸 → 60秒で約20回の呼吸(正常範囲内)
・2秒に1回の呼吸 → 60秒で約30回の呼吸(頻呼吸)
という目安を意識することで、短時間で頻呼吸かどうかを判断する助けになります。
巡視中や患者の観察をしている際に数秒の観察で「いつもより速い」と気づくことが、異常の早期発見につながることがあります。
ただし、この方法はあくまで異常に気づくための目安であり、呼吸数を記録する際や正確な評価が必要な場合には、必ず1分間測定することが重要です。
ベッドサイドモニターの呼吸数だけに頼らない
ICUやHCUでは、ベッドサイドモニターに呼吸数が表示されているため、
その値を参考にすることが多いと思います。
しかし、モニターの呼吸数が必ずしも正確とは限らないことにも注意が必要です。
例えば、
- 体動が多いとき
- 咳嗽が続いているとき
- 呼吸が浅いとき
- 電極の接触が不良なとき
などには、実際の呼吸数とモニターの表示が一致しないことがあります。
そのため、モニターの数値だけを確認するのではなく、
実際に患者の胸郭の動きを観察し、自分の目で呼吸を確認することが重要です。
モニターの数値と患者の様子に違和感がある場合には、
「数値が正しいはず」と考えるのではなく、
必ず実際の呼吸を観察して確認する姿勢が大切です。
モニターの値と患者の様子が違うと感じたときの対応
モニターの呼吸数と患者の様子に違和感がある場合には、
必ず実際に呼吸数を測定して確認することが重要です。
例えば、
- モニターでは呼吸数が30回/分と表示されている
- しかし患者は落ち着いているように見える
このような場合には、体動や電極の接触不良などにより、
モニターが実際より多くカウントしている可能性があります。
逆に、
- モニター上は呼吸数が正常範囲
- しかし患者の呼吸が浅く速く見える
といった場合には、実際には呼吸数が増加している可能性もあります。
そのため、モニターの値だけで判断するのではなく、必ず自分の目で確認することが大切です。
私はモニターの値と患者の様子に違和感を感じた場合には、
必ず1分間実際に呼吸数を測定し、正確な値を確認するようにしています。
呼吸数が増えた時の報告の目安
呼吸数が増加している場合、どのタイミングで医師に報告するべきか迷うことがあると思います。私は以下を目安として考えています。
・呼吸数25回/分以上
→何らかの要因によって呼吸数が増えている可能性があるため、全身状態や呼吸を観察し、報告を検討する。
・呼吸数30回/分以上
→急変リスクが考えられるため、全身状態や呼吸の観察をし、リーダー看護師や医師に報告する。頻呼吸の原因がアセスメントでき、対応できそうであれば対応した後、その結果とともに報告する。
また、呼吸数だけでなく以下のような変化を伴う場合は、呼吸数がそれほど多くなくても早めの方向が必要です。
・SpO₂低下
・意識レベル低下
・血圧低下
・頻脈
・尿量低下
・冷汗や末梢冷感
呼吸数は急変の早期サインとなることがあるため、「少し多いかもしれない」と感じた時点で全身状態、呼吸の観察をすることが重要です。
ICU・HCUでよくみられる呼吸数増加の例
ICU・HCUでは、呼吸数の増加が最初の変化として現れる場面を経験することがあります。
例えば敗血症の初期では、血圧やSpO₂がまだ保たれている段階でも、
呼吸数の増加が最初の変化として現れることがあります。
その後、
- 頻脈
- 血圧低下
- 尿量低下
などの変化が続いて出現することもあり、呼吸数の変化は非常に重要な早期サインとなります。
そのため、呼吸数が少し多いと感じた場合には、「まだ大丈夫」と考えるのではなく、
全身状態を確認し、経時的な変化を観察することが重要です。
まとめ
呼吸数増加の原因として
・低酸素
・循環不全
・発熱
・不安や疼痛
などが挙げられます。
呼吸数は急変の前兆として現れるため、日常的な観察が重要です。
また、「異常かもしれない」と気づいたあとに、どのように対応するかも重要です。
▶ 急変時の初期対応についてはこちら

参考文献
1)看護過程に沿った対症看護 第4版
2)救急初療看護に活かすフィジカルアセスメント
3)バイタルサインからの臨床診断 改訂版

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